はじめに
世界はGゼロと呼ばれて久しく、国際協調という足並みが崩れてきているため、気候変動や地政学的な緊張を緩和するための対策をまとめることが難しい状況になっています。環境リスクも昨今の風水害や地震、山火事や熱波が巨大化しており、サイバー攻撃や誤報・偽情報が氾濫するなど、リスクも多様化しています。企業にとっても、地政学的緊張の高まりと分断、地球環境そして偽情報が大きな脅威であると言えるでしょう。リスクと(ビジネス)機会は表裏一体です。企業としてどのようにリスク対策を講じれば、企業価値を毀損することなく成長できるかを全社横断的に考える必要があります。そのためにはリスクのトレンドをしっかりと把握し、それらのリスクがどのように個社のビジネスに影響を及ぼすのか、リスクの性質も見抜く必要があります。
リスクレポートから見るリスクの潮流
図表1および2は、2024年の年末から2025年の年始にかけて発表された数々のリスクレポートです。紹介しているレポートの多くは地政学リスクが上位を占めていますが、その中で、ユニークなレポートが世界経済フォーラム発行の「グローバルリスク報告書2025年版」です。リスクの分類は他のレポートと違って、経済・環境・地政学・社会・テクノロジーの5つのリスク分類からリスクリストが構成されています。
中でも地政学リスクは、「地経学上の対立」というリスクが2020年代に入ってから上位にランクインし、自国・保護主義政策が主軸であり、地域限定のフレンドショアリングが世界の趨勢になっています。
テクノロジーリスクの中でも「サイバー攻撃」は中央政府や主要企業を狙い経済的打撃を与えるものであり、また「誤報・偽情報」はグローバルでサイバー空間をコントロールできないことが主因であり、国際協調の機運が薄くなっているのです。これは地球温暖化に対する取り組みも同様であり、図表1および2で紹介したリスクは短期~長期のどれをとってもリスクの頻度や被害程度が減少しているものは何ひとつないことが、その国際協調の欠如に依るものだと言えます。
こうしたリスク環境下で持続的な成長を目指すには、グローバルリスクのトレンドを把握し、自社にどのような影響が生じるのか理解することが肝要です。
グローバルリスクの潮流を読み解く:企業が取るべきアプローチ(後編)についてもご参照ください。