by Nicky Liu ,
Enterprise Risk Management Practice Leader, Strategic Risk Consulting, Asia
マーシュの最新ポリティカルリスクレポートによると、世界の地政学的・経済的環境は依然として不透明です。ポリティカルリスクに関する検討は、単独で捉えるのではなく、組織のエンタープライズリスクマネジメント(ERM)フレームワークに統合さ れなくてはなりません。ポリティカルリスクの影響を十分に理解し、把握することで、組織は今日の複雑で相互接続されたビジネス環境をよりスムーズに切り抜けることができます。
ポリティカルリスク分析をERMのフレームワークに組み込む前に、ポリティカルリスクの潜在的な要因と影響力を理解し、経営陣が最も注意を払う必要がある分野に資源を適切に投入できるようにすることが重要です。
リスク選好度を適切に定義することで、組織は戦略目標を達成するためにどの程度のリスクが許容されるかを見極めることができます。経営陣は、自らの組織がポリティカルリスクを許容する意欲があるかどうかについて、自問する必要があります。
こうした質問には次のようなものがあります。
リスク選好度と許容閾値は、ポリティカルリスクの高い市場での事業機会を検討する際に、許容できるリスク水準を明確にするものです。このアプローチにより、企業は、政治的な影響を受けやすい市場における機会を比較検討する際に、自らが被る可能性のあるリスクの影響を認識しながら、リスクに関する情報に基づいた意思決定を行うことができるようになります。
マーシュマクレナンが制作協力している世界経済フォーラム発行のグローバルリスク報告書の最新版では、今日のリスク環境の状況を表現するために「ポリクライシス(polycrisis)」という用語が使用されています。
ポリティカルリスクは多くの場合、組織のERMフレームワークの一部として管理されている他のリスクの推進要因または結果です。組織は、点と点を結びつけ、リスクの相互連関性の検証を行い、主要なリスク間のさまざまな連関を特定する必要があります。組織は、起こりうる連鎖反応、システミックリスク、隠れた脆弱性を把握する必要があります。これにより、ポリティカルリスクがリスク・プロファイルの他のリスクのトリガーや 結果としてどのように作用するかについて、包括的な視点を経営陣に示すことができます。
感応度分析では、さまざまなシナリオをモデル化し、それが組織の業務や財務実績に与える可能性のある影響を評価します。これは、財務モデリング、シナリオプラニング、リスクマッピングなど、様々な手法で行うことができます。
ポリティカルリスクの観点から、感応度分析では、政府の政策の変更、内乱、政治イデオロギーの論争など、いくつかの事象の起こりうる影響をモデル化することが考えられます。組織が受ける可能性のある影響は、事業の中断、サプライチェーンの混乱、労働力の確保、顧客による抗議行動やボイコットなど多岐にわたります。
さまざまなシナリオをモデル化し、その起こり得る影響を評価することで、企業は特定の環境での事業運営に伴うリスクをより深く理解し、それらのリスクに対処するための戦略を策定しやすくなります。
リスク感応度分析の結果、リスク選好度とリスク許容度、リスクの相互連関性を比較することにより、企業はポリティカルリスクを管理・軽減し、長期的な事業の持続可能性を守るための最適な方法を十分な情報に基づき決定することができます。これには以下が含まれます。
ポリティカルリスクマネジメントは、より広範なERMフレームワークの中に統合されるべきものであることに留意すべきです。ERMフレームワークには、どのようなリスクが組織の事業目的に影響を及ぼす可能性があるのか、またその影響の程度を特定・評価するポリティカルリスク分析が含まれます。
ポリティカルリスクは予測しにくく、また急速に変化する可能性があるため、ポリティカルリスクマネジメントを ERM に統合すること により、組織は起こり得るリスクをより的確に予測し、備えることができるようになり、組織のオペレーションや財務パフォー マンスへの影響を最小限に抑えることができます。
保険仲介とリスクマネジメントの世界的リーディングカンパニーであるマーシュは、保険引受能力が制限される可能性のある国や業界においては、適切な ERM フレームワークが特に重要であると考えます。ポリティカルリスクやその他の企業リスクに備えるためには、信頼できるパートナーとの協働が不可欠です。組織のリスクへの耐性を強化するためのリスクフレームワークとメカニズムを検証するために、ぜひ当社へご相談ください。