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保険を活用したリスクマネジメント実践のポイント Vol.7

グローバルレベルでリスクマネジメントを行なう必要性を感じている企業では、リスクマネジャーを採用する動きが起こり始めています。リスクマネジャーに対する企業のニーズは、今後飛躍的に高まってくるものと思われます。
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企業内保険代理店が抱える問題とリスクマネジャーの確保

1996年の保険料率自由化以前、日本の損害保険業界は、自動車保険や火災保険等の主要な保険種目について、どの保険会社も全く同じ料率を使用していました。

そこで、保険料を削減するための手段として、多くの企業がグループ内に保険代理店を設置しました。損害保険会社も、顧客との関係構築のために、企業内保険代理店(機関代理店)の設置を積極的に促しました。先進国でこのように企業内保険代理店が多数存在するのは日本とドイツ以外にあまり見受けられません。

 

保険料率の自由化以前の企業内保険代理店は、企業グループ内に代理店手数料収入を留保するという意味がありましたが、自由化以降は、保険会社間の競争が激化し、入札によって保険料が大幅に引き下がるケースが増えています。

その結果、グループ内の保険代理店を通じて保険を購入することで、保険料がかえって割高になる場合もあり、保険料節約の手段としての企業内保険代理店の意義は薄れています。

また、親会社や関連会社のために手配している保険契約の保険料が下がれば、保険販売の手数料に依存する企業内保険代理店の収益は圧迫され、グループ内の保険料の最小化や保険の最適化と利益相反することになります。

 

一般に、企業内保険代理店は、親密にしている一部の損害保険会社との取引関係が多いため、グローバルスタンダードとなっている保険商品や解決方法について、知識やアクセスが限られる傾向があります。
また、企業内保険代理店の活動領域は国内に限られ、交渉できる保険会社は代理店委託契約を締結している国内損保が中心となるため、グローバル保険プログラムを組成するうえでも限界が生じます。

企業価値の維持・向上のためにリスクマネジメントはなくてはならない要素ですが、現状において企業内保険代理店がリスクマネジメント機能を担う存在とは言えません。そのため、企業内保険代理店の廃業や保険代理業を本業とする企業に売却する動きが加速しつつあります。

 

欧米の企業では、リスクマネジメントを実践する専門職として「リスクマネジャー」という職種が確立しています。海外の多くのリスクマネジャーはリスクマネジメントや保険商品について、保険会社や保険ブローカーを上回るほどの知識と経験を持っています。リスクマネジャー同士の情報交換も活発に行なわれており、リスクマネジャーを集めた大規模なイベントも開催されています。

一方、従来の日本企業では、「リスクマネジメントとはリスクを管理することによって、利益を最大化するための経営ツール」との認識が乏しく、終身雇用を前提とした雇用体系のなかでは、外部から豊富な知識と経験を持つ専門人材の採用も困難でした。

 

しかし、いまや企業が直面するリスクは複雑化・多様化しており、グローバルレベルでリスクマネジメントを行なう必要性を感じる企業は確実に増えています。そうしたなか、日本企業でリスクマネジメント機能の拡充や、外部から知識と経験を備えたリスクマネジャー採用の動きが起こり始めています。

 

アジアパシフィック地域23か国と地域の1,200社超*の企業で保険やリスクマネジメント業務に携わる担当者約2,500名(2022年時点)から構成される「PARIMA(Pan-Asian Risk and Insurance Management Association) 」(本部はシンガポール/2013年設立)は、人脈形成と成功事例の共有、そして最新リスク動向の学びのプラットフォームとして設立されました。その日本支部であるPARIMA Japanへの参加者数も475名となり、会員向けセミナーの開催、学術界との共同研究など、積極的に活動を続けています。こうした活動を背景に、リスクマネジャーはネットワークを拡充し、先進的なリスクマネジメントの担い手としてますます活躍の場を広げています。

2023年10月19日にPARIMA2023カンファレンスが東京・赤坂にて開催されます。実に5年ぶりの東京でのカンファレンスは、リアルなネットワーキング作りや学びの場として、多くのリスクマネジャーの期待感も高まっています。

グローバルレベルでのリスクマネジメント体制を構築し、企業主導で効率的な保険プログラムを構築するには、豊富な経験と高度な知識を持った組織・人材の確保が必要です。リスクマネジャーに対する企業のニーズは、今後、飛躍的に高まってくることでしょう。




 

コラム

日本企業が重大リスクの脅威にいかに向き合うか

リスクコントロールとリスクファイナンスの両輪で対処する

リスクには、 「回避」、 「軽減」、 「転嫁」、「保有」 という4つの対処方法がある。 リスクの軽減については、組織運営上の解決手法として「経営戦略の再検討」、 「従業員の教育」 「業務プロセスの改善」、 「設備の補強やシステムの改善」 などを通じてリスクコントロールをしていかなければならない。

リスク転嫁やリスク保有には、財務的解決手法として 「資本市場の活用」、「保険市場の活用」、「ハイブリット手法」、 「自家保険」 など市場を利用したリスクの転嫁または自己保有、 いわゆるリスクファイナンスについても理解しておくことが大切である。 リスク軽減を図った後、 転嫁した方がより高い経済合理性をもたらす場合がある。

リスク感応度がおしなべて高い欧米企業に対して、 日本企業は?

欧米企業では CRO (Chief Risk Officer/ 最高リスク管理責任者)の指揮下に複数のリスクマネジャーからなるリスク管理部署を置き、 かつ、 社内各部門にもリスク管理責任者を任命し、 部署間を横串にして効率的なリスク管理体制を確立している。 日本企業の中には、リスク管理と保険の購買を同格に位置付けているケースもいまだにあり、 自社のリスクを把握し最適な解決手法を講じる段階には至っていないケースも散見される。

日本は欧米に比して、 訴訟提起やステークホルダーからの情報開示の要求度合はまだ低く、 日本企業におけるコーポレートガバナンスやコンプライアンスに対する意識も非常に高いとは言い切れない。
しかしながら、事業のグローバル化が進み、 日本企業においても外国人投資家やファンド等のモノ言う投資家が登場することが日常となりつつある今、欧米企業並みにリスク対応が求められる。