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保険を活用したリスクマネジメント実践のポイント Vol.6

日本企業の保険手配がグローバルスタンダードと異なる理由を、独自に進化してきた日本の損害保険の特徴とともに解説します。
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保険手配のグローバルスタンダードと日本スタンダード

日本の保険制度は独自の進化を遂げたことから、企業が購入する損害保険の内容はグローバルスタンダードとは少々乖離しています。

 損害保険は、人や企業をさまざまなリスクから守ることを目的としたリスク転嫁の代表的な手法です。欧米企業では、発生すると財務上において大きな損害を受けるリスクだけを転嫁し、高い頻度で発生が予想される小さなリスクは企業が保有することが一般的です。しかし、日本企業では、それらのバランスシートに大きく影響しないリスクに対しても保険が購入されることが多くあります。

 日本の企業向け損害保険が独自の進化を遂げた原因として、次のようなものが考えられます。

(1) 企業内保険代理店の設置

 現在は、各損害保険会社の保険料水準が異なり、消費者が保険商品を比較して購入することが当たり前に行なわれていますが、1996年の保険料自由化前はどの保険会社も保険料はほぼ同じで、商品内容も大きな違いはありませんでした。

 そこで、日本で企業が保険料を節約するための手段として考えられたのがグループ内に保険代理店(機関代理店)を設置して、保険会社から手数料収入を得ることでした。

現在も多くの日本企業で活用されていますが、保険料の根本的な見直しなどの大きな動きが起きにくいことにもつながっています。

 

(2) 保険会社の評価指標の違いによる営業提案の差

 欧米において、損害保険会社は「保険の引受収支(収入保険料−支払保険金)」を重要な指標として評価を受けます。そのため、保険会社からの提案も、大きなリスクを転嫁し、小さなリスクは企業が保有するような保険提案となり、結果、企業が負担する保険料は大小全てのリスクを網羅するより安価になる可能性があります。

 一方、日本の損害保険業界は、「収入保険料」が営業部門の重要な指標となっています。そのためお客様に対して、「小さなリスクは保険ではなく自社で負担を選択し、保険料を削減する」などの提案はあまり積極的ではないことが実情です。

 

(3) 保険会社の組織

 海外の企業相手の損害保険では、顧客対応は保険ブローカーが行い、保険会社は引受だけをする役割分担ができています。しかし日本では、保険会社の営業担当者と保険仲介業者がともに保険の営業活動を行う二重構造になっており、大きな非効率が生じています。

 

(4) 保険会社の付加サービス

 日本の大手損害保険会社は、リスクコンサルティングを行なう子会社を持ち、リスクマネジメントに関するサービスを幅広く提供しています。一方、海外の大手企業は保険会社から独立したリスクエンジニアリングサービス会社を使うか、保険ブローカーが付加的に提供するサービスを活用しています。

 企業がリスクファイナンス(リスクの保有と転嫁という財務面での判断)に関する判断を行ううえでは、企業のリスクに対する許容度やリスク量に基づく理論的な保険料に加え、専門家による客観的な分析結果の活用が必要です。しかし、保険会社の系列コンサルティング会社が顧客のリスクマネジメントに関する情報を提供すると、親会社である保険会社の利益と相反が起こるおそれがあり、リスクファイナンスの判断材料となるような情報提供まで踏み込みにくいという実態があります。

 

(5) 企業における保険の所管部門

 欧米の大手企業では、リスクマネジャーが全世界のリスクを一元管理し、損害保険の購入もできる限り一括して行っています。その際、財務面での判断が重要となるため、具体的な条件等の検討は財務経理部門で行われ、多くの企業はCFOが最終決済をしています。

 一方、多くの日本企業では、企業が保有する建物や什器・備品を総務部門が管理していることから、対する国内の火災保険・賠償責任保険等の主要な損害保険の購入も総務部門が窓口になっています。保険手配を財務経理部門以外が実施することで、ベストリスクファイナンスの観点からの意思決定が困難になっていると考えられます。

 

 

上記のような特徴から、日本企業が購入する損害保険の内容はグローバルスタンダードとは少々乖離していました。しかし、近年ではグローバル型の保険手配を行う日本企業も増えてきており、よりグローバルスタンダードに近いリスクマネジメントが導入されるようになっています。