Alastair Nicklin
電力・再生可能エネルギー部門、事業開発アソシエイト
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United Kingdom
世界的に、蓄電池設備(Battery Energy Storage System/BESS)は再生可能エネルギー分野において、重要な役割を担っており、今後さらに重要かつ導入が期待される見込みです。系統用蓄電池は、再生可能エネルギーのプロジェクトに併設されることが多く、発電時に蓄電し、電力の系統安定を維持する目的で送電網へ放電されます。
蓄電池設備は、脱炭素化へのプロセスとしても非常に大きな注目を集めている分野です。マーシュは、ロンドンで年一回開催される第7回エネルギー・ストレージ・サミットに出席し、2023年のイベントではスポンサーを務めました。このサミットには、エネルギー貯蔵分野の多種多様な関係者を代表して、28ヵ国から570名を超える記録的な数の参加者が一堂に会しました。蓄電池設備(Battery Energy Storage System/BESS)に係る事業には莫大なビジネスチャンスが広がっており、急速に拡大する同分野を英国が主導していることからも、同サミットでは活発な議論が交わされ、楽観的な見方が示されました。
規制当局がバッテリーエネルギー貯蔵に柔軟な姿勢を示しているため、英国は同分野を大きくけん引しています。日本では、災害時における蓄電池からの電力供給(電源設備)などにおいても注力されており、カーボンニュートラル実現のための電源割合の増加という側面では、2024年1月から長期脱炭素電源オークションが開始され、落札された発電業者等は、原則20年の長期にわたる容量確保契約を得ることとなりました。こうした状況がビジネスチャンスをもたらす一方で、プロジェクトの着手を検討する際には、事業リスクや保険手配の面で留意しておくべき事項も複数存在します。
熱暴走(火災)は、BESSが抱える重大なリスクです。
熱暴走とは、誤用や損傷が原因で内部短絡等が生じてバッテリーが発熱して連鎖反応を起こし、火災を招く現象です。熱暴走に関しては、こちらでも詳しく説明されています。ともすると大事故につながる深刻なリスクであり、不幸にも人命が失われる事件も発生しています。マーシュのリスクアドバイザーは再生可能エネルギーに関するリスクに精通しており、プロジェクトの計画段階から建設・操業段階において、所有者・建設事業者・運営管理者を力強く支援し、リスクの軽減と評価に努めています。
BESSプロジェクトにおける蓄電池装置の大半はメーカーによる保証対象となっておりますが、蓄電池本体の性能保証や交換を対象としておりますが、故障・事故に起因する損害は保険にてリスク転嫁を行うことが一般的です。多くの場合、故障に起因する特定のリスクが保証内であれば、保険会社は見積り時に、蓄電池の故障に伴う保証を好材料と捉えるため、メーカーの保証内容および実績等を確認することが必要です。
ただし、保証期限が切れると、保険コストはその点を加味して増額される傾向にあります。現在の技術では、蓄電池の寿命は、日本のBESSプロジェクトで締結される20年の電力販売契約(PPA)の期間よりも短いとされています。たとえば、蓄電池の寿命が10~15年で、PPAの期間が30年に及ぶ場合もあります。
したがって、蓄電池はPPAの期間中に数回交換されることになり、新しい蓄電池へ交換されるたびに保証も新しくする必要があります。
また、蓄電池を保護し収益最大化するために重電と放電をソフトウェアを活用して制御することが可能です。ソフトウェアを活用して制御することで効率性は明白に向上しますが、同時にサイバー攻撃の脅威にも目を光らせる必要があります。 マーシュのリスクアドバイザーはサイバーリスクに精通しており、このような潜在的リスクを把握・軽減・管理できるように支援しています。サイバー攻撃の脅威は日々強まっており、保険会社が求める要件も同様に進化しています。 セキュリティ面の手続きとリスクマネジメント施策を頻繁に検証し、更新しなければなりません。
リスクマネジメントとリスク転嫁は、蓄電池技術の開発を促進するうえで今後も重要な役割を果たすでしょう。プロジェクトを円滑に遂行する上で保険の付保が必要であり、プロジェクトを取り巻くリスクを把握・管理していることを保険会社に明示することが求められます。蓄電池技術は比較的新しく、開発も継続中であるため、リスク引受時に利用できる保険金請求の実績は断片的です。
したがって、技術や規制をめぐる最新の市場動向や変化を捉えておくことは非常に重要です。リスクアドバイザーは絶えず同分野の専門性を磨いており、リスクマネジメントとリスク移転の取り組み全体で的確にコミュニケーションを取ることで、全関係者が知識を蓄積・共有し、リスク移転を円滑に行う支援をしています。
英国で設置される蓄電池(BESS)の電池容量は、今後2年間で倍増する見通しです。ネットゼロの実現に向けて、2030年までに13GWのエネルギー貯蔵が必要だと英国のナショナル・グリッド社が表明していることからも、蓄電池(BESS)分野は間違いなく今後も発展するでしょう。また急速な需要と技術発展に伴って、様々なリスクも増えることが考えられます。マーシュは世界に拠点を置く専門チームと連携をし、リスクを回避するためのベストプラクティスの共有と、各事例によるナレッジを蓄積し、リスクマネジメントを通じて、さらなる蓄電池の分野の発展と進化をサポートします。
蓄電池(BESS)のリスクマネジメントについてご質問がございましたら、マーシュのアドバイザーまでぜひお問い合わせください。
電力・再生可能エネルギー部門、事業開発アソシエイト
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電力・再生可能エネルギー部門、アカウント・エグゼクティブ
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